古く語り継がれる神話の源流であり、たたら製鉄に云われるものづくりの原点。こうした背景をもつこの場所で、未来に何を残すことが出来得るか。私たちは、たたら製鉄とともに伝えられてきた人々の想いに触れ、人と人とを「想い」で結ぶ、婚約指輪や結婚指輪をはじめとする「ジュエリー」をテーマに、ものづくりを学ぶこととしました。時間をかけて育まれた先人たちの技術やそこに在る想いを、私たちなりに思案し、伝えていくことが出来ればと思います。今は未だ研究所のようなしつらえですが、いずれ生産の拠点として、この土地に馴染み、循環する一部となればと思います。

私たちに
できること

指輪がもたらす影響については、実のところ、私たちがかねてより婚約指輪や結婚指輪を扱う中で常に思い巡らしてきたことでもありました。物でありながら想いを伝えるもの。繫がりを感じるもの。思い出を記憶し、容易に取り出すことの出来る記憶装置のような存在。母から子へと受け継がれる婚約指輪のように、時間をも通り越して。

神話やたたら製鉄の長い歴史を紐解いていくとたどり着いたのは、出雲の南に位置する奥出雲地方。一見不便にも感じるこの地を指輪づくりの拠点としたこの選択は、私たちにとっては必然だったのかもしれません。この国のものづくりの原点ともいえる、しかしながら時代の流れとともに衰退の一途を辿った「たたらの火」は、現代においてもなおくすぶっていて、やがて大きな灯火となるような。いつかこの地を訪ねた際に、そんな印象を受けました。

私たちにできることはそれほど多くなく、小さな指輪に限ることではありますが、いつかこうした探求の日々が、大きなうねりの一部となり、後世にものづくりの魅力を伝える一助となれば幸いです。

私たちの
こだわり

[技術]

ジュエリーをはじめ、指輪づくりにおける製法はいくつかありますが、中でも私たちは鋳造製法という製法を選択しました。鋳造とは、鋳型に溶けた金属を流し込み、冷やし固めることによって、ひとつの原型をもとにいくつもの同じ形の物を複製することが出来る、いわば効率的な製造方法といえます。現代におけるこの国でのジュエリーの製法は、この鋳造製法によるところが多く、製作時間やコストの面で広く受け入れられています。

しかしながら、時代の移り変わりとともに指輪に対する価値観も変化し、大量生産ではなく、物心共に個人にフィットする製品が求められる昨今、鋳造とはいえ、ひとつの指輪の作製にかかる時間とコストは増え、より高い品質の製品が求められるようになりました。鋳造を大量生産とひとくくりにするのではなく、ひとりのためのひとつと思っていただけるよう、鋳造の愉しさや苦悩をお伝えできればと思います。

[環境配慮]

そもそも私たちが扱う金属は、金やプラチナ、銀といった貴金属がその中心となります。こうした貴金属は国内ではなく海外で産出されたものであり、鉱山で山を掘り、大地に大穴を空けるといった、自然を破壊するにも似た行為なくしては語ることは出来ません。鋳造の工程においてもやはり、大量の水や産業廃棄物にもなる石膏を使用する場面がいくつもあります。

こうした側面を受け止め、自然の恩恵をいただき、日々の暮らしを豊かにするための道具が作られていることを、製品そのものから感じていただけるように工夫し、また発信していきたいと思っています。

配給

出雲結(いずもゆい)
縁結びのご利益で知られる出雲大社の表参道「神門通り」に本店を構える婚約・結婚指輪ブランド。令和7年4月現在、浅草・青山・名古屋に支店を構えています。私たちとの取り組みとして、新商品の開発について、たたら場鋳造所での試作などを行っています。

出雲縁(いずもえん)
出雲結との姉妹ブランド。同じく神門通りの店舗にて、ものづくり×縁結びをテーマに、結婚指輪やペアリングの手作り体験、アクセサリーの販売を行っています。ペアリング用の材料となるシルバーリングはたたら場鋳造所にて全て製造しています。